青木 弥右エ門(おあき やえもん)さん

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COREZO(コレゾ)

代々受け継がれてきた製法を頑固に守り、ものづくりにこれでいいという終着点はないと、加工品は一切やらず、豆味噌・たまり醤油だけを愚直につくり続ける五代目」賞


南蔵(みなみぐら)商店株式会社 五代目

青木 弥右エ門(おあき やえもん)さん

南蔵(みなみぐら)商店株式会社

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五代目


ジャンル

豆味噌・たまり醤油 製造販売 

受賞者のご紹介

 青木 弥右エ門(おあき やえもん)さんは、昔から豆味噌・たまりの醸造が盛んだった愛知県知多郡武豊町にある南蔵(みなみぐら)商店株式会社の五代目。

武豊町(たけとよちょう)は、名古屋から名鉄河和線で知多武豊駅まで約40分。知多半島の東側、三河湾の臨海部に位置し、沿岸には工業地帯が広がっている。知多郡では、酒造業が盛んだったが、神戸の灘酒に押されて衰退し、不要になった蔵や桶などの醸造施設が味噌造りに転用され、また、海運の発達で、原料の大豆が直輸入されるようになって、全国にも有数の味噌・たまり生産地になったという。

 プラックプレジデントこと、日東醸造株式会社社長の蜷川洋一さんから、しろたまりは小麦だけでつくる白しょうゆだが、愛知県には、大豆だけでつくるたまり醤油もある、と伺っていて、COREZO(コレゾ)というたまり醤油をつくっておられる方を紹介して欲しいとお願いしていたら、昔から豆味噌・たまりの本場といわれた武豊で、代々、受け継がれた製法を現在に至るまで頑固に守り、自然の味を造り続けておられる方がいらっしゃるとのことでお連れ頂くことになった。 

 さて、たまり醤油とはどんな醤油か?

 よく耳にはするが、白しょうゆ同様、関西のスーパーではまず見かけることはない。まずは、醤油のおさらい。日本農林規格(JAS)では、製造方法、原料、特徴などから、「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5種類に分類され、醤油は「しようゆ」と表記されるそうだ。


 「たまり」は、wikiによると、豆味噌を搾って、その液体部分のみを抽出したものが中心で、主原料は大豆、小麦は使わないか使っても少量。江戸時代中期まで醤油の主流だった。とろりとして、旨味、風味、色ともに濃厚である。現在では、普通の醤油(濃口醤油)と同じ製法で、単に小麦を使わないか少量しか使わないものをたまりと称することも多い。豆味噌と同様に愛知・岐阜・三重の東海地方が主産地。香りはこいくちに比べてやや弱い、とのこと。

 大筋、合っていると思われるが、肝心な製法等が抜けているので、五代目の話をよく読んで頂きたい。 

 初めて降りた「知多武豊」駅で蜷川社長と合流し、しばらく車で走ると、黒塀と蔵の町並みになり、南蔵(みなみぐら)商店株式会社に到着した。 

 五代目青木弥右エ門さんにご挨拶をして、早速、蔵をご案内頂いた。 

 「これは、今日、味噌を仕込んだ桶です。代々続く、ウチの麹のつくり方があって、豆味噌は、一番いい麹をつくれる3月と4月限定で仕込み、3年間熟成して、それを半年から1年かけて出荷するのが基本です。」 

 「豆味噌とたまりの麹菌は似ていますが、微妙に違います。味噌の方がデリケートで、たまりの方はそれよりも強い菌です。デリケートな菌ほど、環境が大事で、花が咲く時期が麹菌の繁殖にも最もいい季節なのです。」

 「皆さんが知っている通常の味噌や醤油は、米麹や麦麹があって、それに大豆等を仕込むのですが、私どもでは、大豆と塩だけを原料に、全麹といって大豆自身に麹菌を付けて、大豆を全て麹にして仕込みます。」

 「豆味噌とたまりの麹は玉状になっているのが特徴で、豆味噌は、味噌玉麹にして仕込みますが、たまりの玉より味噌玉の方が少し大きいです。八丁味噌も大豆100%ですから、味噌玉麹なのですが、私どもよりもっと大きな団子のような玉になっています。」 

−− まるや八丁さんで見ましたが、確かに大きかったですね。その大きさの違いはどのように影響するのですか?

  「麹菌は外から繁殖するので、玉が大きいと中に乳酸菌等も繁殖します。」

−− それで、八丁味噌は少し酸味があるのですか?

 「そうですね。それが八丁さんの特徴でもあるのですが、私どもでは、玉を小さくして、できるだけ麹菌だけを繁殖させるようにしているのが特徴で、食べてみてもらえば違いがわかりますが、豆味噌に白味噌が入っているように思われる程、あっさりしています。」 

 「仕込んだ桶をご覧になって下さい。私どもでは、6トンの原材料に1〜2トンぐらいの石を重しとして乗せるのですが、八丁さんは、6トンに3トンぐらい乗せておられるようです。なので、水分は私どもの豆味噌の方が多いですね。」 

 「豆味噌の麹は嫌気性なので、空気を抜くために、八丁味噌と同じように職人さんが踏み固め、表面が乾涸びないようにするためにも蓋をして、重しを乗せます。」 

−− 確かに、重しの石の量は八丁さんより少ないですね。確か、醤油の発祥は味噌の上澄み液と伺ったことがありますが・・・? 

 「おっしゃる通りで、私どもの豆味噌もたまりも大豆と食塩だけでつくります。豆味噌を仕込んで1〜2年もすると上澄み液が出てきますが、元々は、それがたまり醤油でした。しかし、豆味噌は、1トンの原料に4割ぐらいの塩水で仕込むので、水分が少なく、ほんの僅かしか上澄み液が取れません。そこで、先達たちが、上澄み液をもっと効率よく生産するために、仕込み塩水を増やす工夫をしました。私どもでは、5分仕込み、6分仕込み、10水(とみず)仕込みとあるのですが、原料に対しての塩水の割合を表しています。10水仕込みであれば、原料と塩水が1:1の割合ということで、塩水の割合を増やせば、たまり醤油がたくさんつくれるということですね。」 

 「実際、戦中、戦後の物資が不足していた時代には、5分仕込み、6分仕込みにして、たまり醤油を取った後、味噌としても販売していたのですが、どちらにもうま味が出てしまうので、どっちもどっちの製品になってしまうんですね。それで、今では、豆味噌とたまり醤油、それぞれに最適な麹菌を使って、全く別々に仕込んでいるのです。先程もお話ししたように、豆味噌は3月と4月にしか仕込みませんので、生産量としてはたまり醤油の方が8割を占めます。」 

 「今でも、豆味噌もたまり醤油も全量を木桶で仕込んでいて、92〜3本ある仕込桶の内、35本ぐらいを味噌の仕込みに使っています。生産量の割合に比べて、味噌の仕込みに使う桶の数が多いのですが、仕込み期間が、味噌は3年以上に対して、たまり醤油は1年半〜2年半なので、味噌の方がより製造サイクルが長いためです。 

−− 現在、1軒しか残っていない仕込桶をつくれる桶屋さんが、将来、なくなってしまう可能性が高いことに危機感はありませんか?

 「武豊には、2年程前まで桶屋さんがあったんですよ。今、醸造元は、5〜6軒になってしまいましたが、大正から昭和の初めにかけて、50軒以上あって、桶屋さんの商売も盛んだったんです。ところが、廃業されるという話を聞いて、ウチも慌てましてね、多少、無理もしたのですが、廃業されるまでの3年間に20本の桶を発注しました。といっても、新桶をお願いしたのではなく、廃業されたところの桶を譲り受け、痛んだところを削ったりして、元の2/3ぐらいの大きさになるのですが、組み直してもらいました。後の桶は、ウチは創業して143年目ですが、創業当時から使っているものだと聞いています。」 

 「今のタガは鉄なので、20年程で取り替えないといけません。本当は、竹のタガの方が長持ちするし、桶にもいいのはわかっているのですが、箍職人さんもいなくなりましたからね。この辺りは木桶で仕込むところも多く、桶屋さんがなくなったら困りますから、タガの締め方だけでもと習得してくれた地元の大工さんが頼りです。」 

 翌日、日東醸造さんの足助仕込蔵に仕込桶の修理に来ておられた藤井製桶所の上芝さんにお会いして伺うと、武豊の桶屋さんは最後に残った2軒の内の1軒だったそうで、長年、協力関係にあって、店仕舞いも手伝われたそうだ。 


 新桶にも見える程、見事に組み直された桶を拝見した後、たまり醤油の生産工程を見学させて頂いた。原料の圧力釜で蒸した大豆を試食させてもらったのだが、蒸しただけの豆だが、とても甘くておいしい。これが原料なのだから、さらにウマい味噌やたまりができるはずだ。 

 「この大豆をさましてから麹菌が付きやすいように味噌玉を造ります。玉にして、麹菌を満遍なくまぶすんですね。室(むろ)に入れ、麹の温度を32~3℃に保ち、3~4日間、目で見て、匂いをかいで、手触りを確かめながら麹の出来上がりを待ちますが、3年後の味がここで決まってしまうので、最も神経を使うところです。」 

 「次に、できた味噌麹を木桶に入れ、塩水を掛け加え、仕込みます。仕込み後、初期は毎日汲み掛けを行い、麹が早く均一に塩水を吸収するように努めます。通常の醤油は、櫂入れといって、櫂でかき混ぜるでしょ?汲み掛けというのは、液体の濃度が濃い5分仕込たまりだけの独特な混ぜ方で、桶の底の辺りにまでパイプを入れて、パイプから柄杓でたまりを汲み上げ、対流をおこして、循環させます。」

 「仕込んで2週間ぐらいは、毎日、柄杓で3〜40杯、1ヶ月目までは3日に1回ぐらい、汲み掛けをし、麹が早く均一に吸収するように努めます。2~3ヶ月目以降は表面が乾かない程度に汲み掛けを行い、自然のままゆっくりと歳月をかけて醗酵・熟成するのを待ちます。」

 「出来上がったたまりは、1年半〜2年半熟成させた後に、滴り落ちたウマさたっぷりの濃厚なエキスをそのまま、生引(きびき)という方法で、仕込桶の下部呑口を開いて生たまりを引いたのが、生引たまりという製品です。10水仕込であれば、2500L仕込んで、約1000L引けるのですが、5分仕込の場合は、200Lぐらいしか引けません。水分が少ないと、生引(きびき)では、ほんの小量しか引けないのです。生引たまりを引いた後、たまりもろみを圧搾機にかけて圧搾たまりも搾ります。 

−− 10水仕込みと5分仕込みの生引きの味の違いは? 

 「味比べをしてもらえばわかりますが、味、うま味の濃さがまるで違います。どうですか?」 

−− 確かに、全然違いますね。5分仕込みの方は、水分が少ない分、エキス分も濃いのでしょうね、凝縮されたようなウマさです。これだけでご飯のオカズになりそうですね。 

−− 生引と圧搾の味の違いは?

  「生引きだと、油分が出ないので、まさに自然のままの味ですね。圧搾の方は、10水仕込みでも5分仕込みでも、私どもは丸大豆しか使わないので、搾れば、大豆の油分が出て、その油分が苦味や雑味の元になります。ですから、1週間ぐらい静置して、自然分離し、油分を取除く作業を繰り返します。手間は掛かるのですが、そうしないとおいしい圧搾たまりになりませんし、こうした方が大豆油を搾った後の脱脂加工大豆を使うよりはるかにおいしいのです。」


 「搾り立てのたまりをご覧頂くと、ピカピカと光っているでしょ?これは油分が混じっているからですね。ちょっと舐めてみて下さい。ね、少し苦味があるでしょ?こちらのは、圧搾前の10水仕込みのもろみです。色が少し薄いですが、見た目は味噌でしょ?舐めてみて下さい、味も味噌に近いと思います。搾った後の油は石けん製造用に、大豆カスは飼料用に出しています。」

−− 確かに味噌の味ですね。搾りカスの方は、そう呼ぶのは失礼なぐらいおいしくて、食用として充分いけますよ。脱脂加工大豆の製品よりよっぽどいいんじゃないですか?もったいないですね。 

 「搾りカスは、忙しい時期には、月に10トンぐらい出ますが、昔は産業廃棄物だったんですよ。ま、国産丸大豆が原料ですから、まだまだ、うま味成分もタンパク質も充分残っていますし、栄養価も高いんですが、塩分がジャマなようですね。この価値がわかる方にいい使い道を考えて頂けると有難いですね。」

 「ウチは、欧州や海外向けに有機のたまりもつくって、輸出しているのですが、船便で約半年、瓶詰めしたり、なんだかんだで、消費者の手元に届くのに1年ぐらい掛かることもあるそうで、外国の方は、せっかちなのか、その間も熟成期間だとおっしゃるので、国内向けよりも早めに搾って、輸送容器に詰めて発送します。長期保存には、防腐が必要なのですが、醸造用アルコールはダメで、天然醸造のホンモノならいいよ、というので、角谷さんのみりんを使っています。通常は14〜5%ですが、焼酎を多くして31%までアルコール度数を上げてもらって、4%をすこし超えるぐらいの割合で添加すると、たまりのアルコール度数が1.2%ぐらいになるので、それで防腐をしています。 


−− なかなか厳しい要望ですね。でも、せっかく丁寧につくったたまりにヘンなものを入れたくないでしょうし、角谷さんのみりんなら最高ですね。小豆島の醤油屋さんが、欧州で販売するのにコーシャ認定を取得しているとおっしゃっていました。 

※コーシャとは、ユダヤ教で定める食べ物に関する規定。魚(限られた種類)、特殊な屠殺のみによる牛肉、羊、鳥肉など、野菜、果物、その他の自然の産物と、その製造過程で混ざり物、身体に安全でないもの等が入らないように、厳しく管理された加工品のみがコーシャの食品として認められ、日本以外の諸外国では、コーシャのマークが付いた食品が沢山売られており、品質を信用して購入できる証としての認識が広まっているという。 

 「ウチもコーシャ認定を取っていて、毎年、ラバイの検査員が6月か7月に来て、指導、認定を受けています。」 

 「海外向けには、米国産を使っていたのですが、栽培量が減ったのと有機もだんだん怪しくなってきていまして、今は、中国産の有機大豆を使っています。国内向けは、100%国内産大豆を使っていますが、海外のお客様はどこの国産より、有機の方を重要視されるようです。国産有機は、生産量が少なく、価格も倍以上しますので、通常商品にはとても使えませんが、ある業者さんからの委託を受けて、一部ですが、醸造していています。」 

 「味噌や醤油も加工品の需要の方がどんどん増える中、ウチのように加工品を一切やらずに、豆味噌とたまり醤油そのものだけをつくっているメーカーはとても珍しくなりました。スーパーの店頭に並ぶと値段では全く勝負になりませんが、それでも買って下さるお客様がいらっしゃるので、なんとか商売を続けさせてもらっています。だからこそ、お客様は裏切れませんし、私の代になって味が変わったといわれること程、恥ずかしいことはありません。とにかく、代が替わっても味は変わらないということだけは守っていきたいですね。」 

 「私どもは、代々受け継がれてきた昔ながらの製法を頑固に守り、麹をつくって、木桶に仕込みます。後は、この環境がつくってくれるので、熟成管理とかのお手伝いをしているだけなんですが、これが実に奥が深いのです。ものづくりに、これでいいという終着点はありません。原料を吟味して、国産大豆100%、完全無添加なのはもちろん、『常に身土不二の心を大切に、現状に満足したくない、もっと良い物を造りたい』との思いから、『海の精』という国産の自然海塩を使った仕込みも始めました。そんな取組みを消費者の皆さんにいかに伝えられるかいうことなんですね。私どものやり方と、味をわかって下さるお客様がいらっしゃるのは、本当に有難いことで、さらに、お客様に喜んで頂ける豆味噌、たまりづくりに励み、これからも愚直につくり続けます。」


 COREZO(コレゾ)「代々受け継がれてきた製法を頑固に守り、ものづくりにこれでいいという終着点はないと、加工品には目もくれず、豆味噌・たまり醤油だけを愚直につくり続ける五代目」である。

 

 青木 弥右エ門(おあき やえもん)さんに関するお問い合わせは、

  メールで、info@corezo.org まで

 

 ※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

 

COREZO(コレゾ)賞 事務局 (2014.07.最終取材、2014.09.10.編集更新 文責 平野 龍平)

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