森澤宏夫さん

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COREZO(コレゾ)「海と山は川で繋がっていると、海で生まれ、山で育ち、笑顔をつなげる天日塩、土佐の山塩小僧」賞

森澤 宏夫(もりさわ ひろお)さん


土佐の山塩小僧 代表


兵庫県神戸市出身、高知県四万十町在住

 

ジャンル

製塩業 天日塩製造

環境保全型農業指導

 



経歴・実績

1954年 神戸市生まれ

2000年 天日塩土佐の山塩小僧」を四万十川中流の山間で生産開始

2001年 「土佐の山塩小僧」販売開始


元高知県農業改良普及員

四万十町十和地区の農家を束ねた生産出荷組織「おかみさん市」の指導

環境保全型農業を推進

JAS 検査員

 

受賞者のご紹介

森澤 宏夫(もりさわ ひろお)さんは、高知県四万十町、海抜170m程の旧大正町の山あいの、すぐ傍を流れる四万十川に注ぐ小川脇の元田んぼで「山塩小僧」という完全天日塩をつくっておられる。地元や全国の塩好き、塩マニア?の間ではかなり有名な方らしい。

 

 岩塩を採掘する訳ではなく(そもそも日本では岩塩は産出しない)、なんで、わざわざ、海から40分もかけて海水を運んで、山あいで塩づくりをせなあかんねん?ということで、高知県庁の課長さんや居長原 信子(いちょう はらのぶこ)さんにご紹介頂き、お目に掛かることができた。

 

 居長原さんに連れて行って頂いたのは、四万十町役場の支所だった。森澤さんは、四万十町地産地消営農係?で、農業指導員?もしておられるようだ。

 

 で、ご挨拶を交わした森澤さんは、いかにもと言った風貌の御仁で、COREZO(コレゾ)財団なんてワケのわからん名刺には、一瞥を下さっただけで、

 

 「ボクね、農業改良普及所で農業の近代化の仕事をしてたんです。」と、いきなり話が始まった。

 

 ん?農業改良普及所って何?ってことだが、そんなことはおかまいなしに話が進んでいくのであった。

 

 で、某農水省のWebサイトによると、

 

 専門技術員は、国で行う資格試験合格者のなかから都道府県職員として任用され,試験研究機関,市町村,団体,教育機関等と密接な連絡を保ちながら,専門の事項や普及指導活動の技術・方法について改良普及員を指導する役割を果たしている。さらに都道府県には,普及組織として農業改良普及所が設けられている。制度の発足当初は全国で2120ヵ所を数えたが,農業経済圏の広域化,農業経営の専門化や農業技術の高度化にともない,順次広域的体制に整備されてきた。

 

 ん?専門技術員って何やねん?

 

 平成16年度までの普及職員の資格試験は、「改良普及員」と「専門技術員」の二つが実施されていた。改良普及員資格試験は、原則として大学卒(卒業見込みを含む)を受験資格として各都道府県が実施していたもの。また、専門技術員資格試験は、専門の調査研究や改良普及員の指導を担当する技術者として、大学等を卒業後、農業等に関する試験研究又は教育、農業等に関する技術についての普及指導に従事した期間が10年以上に達する者を受験資格として国が実施していた、とのこと。

 

 平成16年5月に改正された農業改良助長法に基づき、都道府県に置く普及職員が「普及指導員」に一元化されたことに伴い、平成17年度からは、これら二つの資格試験を廃止し、新たに「普及指導員資格試験」を国が実施することとなり、普及指導員は高度な普及事業を担当する即戦力の技術者として任用されることから、「普及指導員資格試験」では、大学卒業見込みで受験できた従来の改良普及員資格試験とは異なり、大学院修了後2年間(大学卒では4年間)の実務経験が受験のために必要となった、とのこと。

 ま、とりあえずの知識を仕込んだ上で

 「ボク、神戸の出身でね、高等専門学校に行ってたんですけど、高専の5年生の時に親戚の家で田植えをしたのが楽しかったんで、香川大の農学部に進学したんです、ハハハハ。」

 

 「それでね、改良普及員の国家資格を取って、1980年頃、高知県庁に入庁しました。なんで、高知県庁だったのかといわれても、祖父が高知県出身みたいだったけど、特に理由はなくて、ま、しいていうと、四国の大学に行ってたからかなぁ。」

 

 「でね、農業の近代化といえばわかるでしょ?単位面積当りの収穫量を上げるために、アンナもんやコンナもん使えとか、コンナン育てろとか、他には、ハウスとかの施設園芸の指導をしていました。」

 

 「やってるうちに、いろいろ思うところもあって、県庁を辞めてからは、環境保全型のISO14001取得や減農薬の指導をしています。」

 

−− 塩づくりを始められたきっかけは?

 

 「高知県の旧黒潮町に『生命と塩の会』というのがあって、そこで海の水から天日だけでつくっている塩を食べて、うまいと思ったからです。どうせ、ヨソ者だから、地に足は着いていないんだろ?とか、いわれながら、そこで、塩づくりを手伝ったり、海や自然を守る活動をしていました。ところが、その会が内輪モメというか、仲間割れしたんです。」

 

 「そこでの塩づくりはやめたんですが、ヨソ者だから、地に足が着いていない、とはいわれたくなかったですね。」

 

 「県庁を辞めて、田舎暮らしをしたいという思いもあって、今、塩を作っている旧大正町に田畑付きの古家を手に入れていたのですが、集落道と水路の整備で5枚の田んぼを1枚にしてくれるという話が降って沸いてきて、それなら、そこで塩をつくろうということにしたんです。」

 

−− 海の傍ならともかく、山あいで、周りに田畑や小川があったりしたら、反対されませんでしたか?

 

 「ハハハハ、もちろん、始める前は、塩害が出ると反対されましたよ。海水は循環させますし、せっかく天日で濃度が濃くなった塩水を排水するなんて、もったいないことはしませんし、ましてや、できた商品の塩を川に流すなんて誰がしますか?1年かけて説得して、最後は、塩害が出たら立ち退きますという念書まで書きました。それで、2000年の12月に塩づくりを始めて、商品ができたのは2001年の5月でしたね。」

 

−− どのように塩をつくられるか見せて頂けますか?

 

 「今日は夕方まで役場で仕事がありますので、明日ならいいですよ。」

 

 ということで、翌日、ご自宅に伺った。

 

 「ボクの車についてきて下さい。」と言われ、橋を渡り、川向かいの立派な製塩工場にはとても見えない、周囲の田園風景の中にキッチリ収まった、どっからどう見てもビニールハウスに着いた。袋詰め作業兼、発送作業場のような6畳程もある広々とした事務所に通して頂き、塩のレクチャーを受け、大規模、モトイ、ビニールハウスをちょちょっと改造したような由緒正しき、COREZO(コレゾ)家内制手工業の見本的な製塩工場にご案内頂いた。

 

 「まず、2トントラックで、海から約40分かけて海水を運びます。その量の海水から、約50kgの塩ができます。」

 

−− 場所は何処ですか?

 

 「以前、海の傍で塩づくりをしていた時に、汚染されていないきれいな海水を取水できる場所は見つけてありました。そこから運んでいます。万一のこともあるので、場所は伏せておきます。」

 

−− そりゃそうですね、イヤガラセで、何かヘンなものでも投棄されるかもしれませんよね?でも、車で40分ということは県内ということですね?

 

 「ハハハハ、ま、そういうことにしておきましょ。で、運んだ海水は、貯水タンクに入れて、ここからポンプでこの『採鹹(かん)ハウス』に送り、このように海水をシャワーのように竹ボウキにかけて、表面積を広くすることで、釜で炊かずに水分を蒸発させます。『採鹹』というのは、海水を濃縮して塩分濃度を上げた『鹹水』を作ることです。」

 

−− 枝条架?っていうんでしたっけ?なんかで見たことがあります。能登では、海水を塩田の砂にバラまいていましたよ。

 

 「それは、塩砂に海水をまいて、天日と風で水分を蒸発させた後、塩砂をかき集めて、海水で洗って、鹹水をつくる方法で、その後、釜で煮詰めます。この枝条架を使うのは流下式と呼ばれています。何度も循環して、繰り返し、海水の5倍くらいの濃度になったら、『天日ハウス』に移します。」

 

 「『天日ハウス』では、この箱に、網の上から、『採灌ハウス』で濃縮した海水を注ぎ、後は、毎日、表面に浮かんできたゴミや不純物を網ですくい取り、ヘラでまぜ、を繰り返します。箱は杉で作っていて、内側をガラスで被っています。ステンレスでも錆びてしまうので金属製のものは使えません。防水は食品製造でも使われる安全性の高いシリコンを使っています。」

 

−− 夏場は暑いでしょうね?

 

 「暑いちゅーもんやありませんで、サウナになんか行く必要がありません、ハハハハ。でもね、温度の上がる上段より、下段の方、また、夏場より冬場の方、日差しが強く、気温の高い海辺より、ここみたいな山間部の方、というように、ゆっくりと時間をかけて作った塩の方が、おいしいように感じますし、実際に買って下さる皆さんもそうおっしゃいますね。」

 

−− そんなに違うものですか?

 

 「まあ、ボクは毎日、味見をしていますからね。海辺で作るのと比べると、同じ季節なら、3倍ぐらい時間が掛かります。ここじゃ、夏場で2〜3週間、冬場で2〜3ヵ月ですね。時間をかけてできあがった塩には、カルシウムなどの海水中のミネラル分も取り込まれまれるようです。カルシウムやマグネシウムをそれだけ食べてもうまいというわけではないのですが、それらが少しずつ混じり合っていることで、塩の味に深みやまろやかさが出るのでしょう。イオン交換法で作った、純度の高い塩化ナトリウム(NaCl)と比べると、味の違いはすぐにわかると思います。」

 

−− 原料となる海水も取水する場所や季節によって成分も変わるのでは?

 

 「それはそうでしょうね。塩もつくり方や場所で味が異なります。海水の取水は、海の状態の良いタイミングを選んでいますが、季節によって微妙に違うと思います。」

 

−− こちらでつくった塩でも、冬場、下段でつくった塩が最も手間と時間が掛かり、おいしいということですね?値段は違うのですか?

 

 「ハハハハ、一緒です。」

 

−− ならば、冬場の塩が欲しいというお客さんもいるのでは?

 

 「そういう販売の仕方はしていませんが、作った塩はすぐに売り切れてしまうので、購入される時期を選べば、お好みの時期に作った塩を購入できる可能性はありますね。」

 

 「これ見て下さい。ここで天日干ししているうちに、エビなんかの海の生物が卵から孵って飛び跳ねていることがよくあるんですよ。この海水が生きている証拠です。」(写真を撮ったのだが、カメラマンの腕が悪く飛び跳ねているエビは写っていなかった。残念!)

 

 「今から30億年以上前に、海から生命体が誕生し、私たち人類も塩水である海の中から、進化・発達してきました。そして、4億年ほど前に初めて生物が陸に上がりました。もともと海の中で命を育み、海に抱かれて進化してきた動物は、体内に海を抱いているのです。それが血液で、血液は文字通り「血潮」なんです。」

 

 「この長い歴史からも分かるように、海の中で塩水に囲まれて生活してきた生命体にとって、自然の塩分を補給することは必須だと思います。肉類にはナトリウムが含まれているので、肉食の民族は塩分の摂取に過敏に反応しますが、元々、日本人は穀菜食中心で、カリウムが優勢なため、「塩」のナトリウムでバランスを取ってきました。それも、海水からつくった天日塩を摂取してきました。減塩や危険性が叫ばれるのは塩化ナトリウムの純度の高い塩なのです。」

 

 ここで、塩のベンキョー。専売制が布かれていた時代に、自然塩の存続運動を続けてきたという方からお話を伺って驚いたことがある。人間、思い込みはイケナイというのを思い知った。

 

塩には海水からつくった海水塩、海水が地中に閉じ込められて結晶化した岩塩がある。ちなみに、海外の大規模な塩田でつくった方が安上がり(原塩1kg30円以下らしい)なので、化学合成ではつくっていないとのこと。

 

 日本では、塩の自給率は15%程度、食用は、約85%が国内産塩で、塩の全消費量の約20%、残りの80%を工業用占める。ソーダ工業用を中心に世界最大の塩輸入国で、全消費量の85%は、主にメキシコとオーストラリアからの輸入に頼っているそうだ。

 

   専売公社(JT)塩とは、イオン交換膜と電気を使って、海水中のナトリウムイオンと塩素イオンを濃縮して取り出し、真空蒸発釜で煮詰めたNaCl純度(99.5%以上)の高い塩。日本では、工業用の純度の高いNaClの需要が高く、世界で初めて導入された技術だとのこと(本格導入は1971年)。また、1905年から2002年まで専売制が布かれていた。

 

 再生塩とは、公社塩や海外(主にオーストラリアやメキシコの塩田)でつくられた海水塩に安価な中国産等のニガリを加えたり(一般によく知られている食用塩に多い)、海外産塩を海辺の井戸水で一旦溶解して再結晶した塩(日本の海水からつくっていると思い込んでいた塩がこれだった)等がある。

 

天日塩とは、海水から天日や風の力でつくる塩で、森澤さんのように、一切加熱しないで、天日だけでつくる塩だけでなく、釜等で加熱(煎合)する工程がある塩も含まれるようだ。

 

 太古の海の化石ともいえる岩塩は、総じて、ニガリ成分やミネラル分が極端に少ないらしく、岩塩を多く摂る欧米人はサプリメントでミネラル分を補い、中国では「ヨード欠乏症」に罹る人が多いそうである。また、重金属等の鉱物を含んでいる可能性が有り、食用にするものは、一旦水に溶かし、煮詰めて精製するようである。

 

塩の良し悪しを見分け方として、海水に合わせた塩分濃度(平均約3.5%、内NaClは約80%)の塩水をつくり、その中に入れた「あさり」が、殻を開き、管を出して生きていられるかどうかを確かめる方法があるようだ。海洋生物が死んでしまうような塩ってどうよ、ということらしい。

 

 話は戻って、

 

 「時間が経つにつれ、このように結晶化してきますが、さらに撹拌し、丁寧に揉みほぐします。ほぼ水分が無くなった状態になると、袋に入れ、遠心分離機に入れて脱水します。遠心分離機といっても脱水機ですけどね。脱水した水分は塩化マグネシウムを主成分とするニガリですから、もちろん全て回収して、行き先も決まっていますよ。」

 

−− まっこと、手塩にかけた塩ですね。ここのような山間地でつくれば、おいしい塩ができるという目算はあったのですか?

 

 「特に目算も理由もなく、好きなところで好きなようにしたかっただけで、ここに家と田んぼがあったので、塩は塩田でつくるから、田んぼでつくってもええんやないかと・・・。で、つくってみると、時間が掛かる分、おいしい塩ができた・・・。」

 

 「ここで塩をつくり始めて、つくづく思うのは、海と山は川で繋がっているということです。山が荒れると海も荒れ、山が豊かだと海も豊かになります。山で作るお塩に、海と山を繋ぎたいという想いと、この豊かな緑に包まれたおいしさを少しでも添えることができたらいいな、なんて考えながらつくっています。」

 

 「以前、講演を頼まれて、神戸のホテルで、塩の話をしたんです。最後に、海水を汲んできて、トレイなんかに入れ、ラップして、太陽に当てておけば、誰でも塩がつくれます。すぐ傍の海から海水を汲んできて、このホテルのブランドで塩をつくったら如何ですか?って、提案すると、皆さん、そのなの誰も買わない、と言うんです。では、塩づくりもできない海にしたのは誰の責任ですか?塩づくりができるぐらい海をきれいにすることから始めては如何ですか?その海から自分たちが食べる塩をつくろうと思えば、合成洗剤や廃油等を生活排水として川や海に流せませんよね?って、話しました。」

 

 「塩は誰でもつくれるので、塩づくりをすることで、海につながる山や川から、海を守ろうという気持ちを育てたいですね。そして、海と川や山が密接につながっていることをわかってもらえればいいなぁ、と思います。」

 

−− ありゃー、めっちゃ、エエ話ですやん?エエ話は、ぜーんぶ、カットですけど、COREZO(コレゾ)賞は受賞して頂けますか?

 

 「ハハハハ、ボクで良ければ。」

 

帰り道、久礼大正市場で、「土佐の一本釣り鰹」をザクで買って帰り、「土佐の山塩小僧」とスダチで食べた。まっこと、そのうかまかったのって・・・。

COREZO (コレゾ)「海と山は川で繋がっていると、海で生まれ、山で育ち、笑顔をつなげる天日塩、土佐の山塩小僧」である。

 

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メールで、info@corezo.org まで

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、返答致しません。

 

COREZO (コレゾ)賞 事務局 (文責 平野龍平 最終取材2013.06. 編集更新2013.10.12.)

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