片木 明さん

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COREZO(コレゾ)「何事にも強い意志と我慢が肝心、完全無農薬のお茶づくりの先達」賞

片木 明(かたぎ あきら)さん

滋賀県信楽町出身、在住

「かたぎ古香園」6代目

http://www.katagikoukaen.com/

日本茶インストラクター

ジャンル

食・農業

無農薬、無化学肥料のお茶生産・販売

経歴・実績

1950年 滋賀県信楽町生まれ

      滋賀県高等営農学園(現農業大学)卒

1975年 無農薬のお茶栽培を始める

受賞者のご紹介

 滋賀県の石山寺から車でおおよそ30分、片木 明(かたぎ あきら)さんの朝宮茶の茶園は京都との県境に近い標高約550mのところに広がる。

 朝宮の地は年間の気温の差が−9℃から39℃あり、また、1日の気温差も10℃以上と大きいことから独特の高い香りが生まれ、テアニンという旨味成分が多く含まれる。朝宮茶は古来より高級茶として知られ、宮中や幕府で珍重されてきたそうだ。

 約800年前、鎌倉時代の臨済宗の開祖、栄西が中国(当時の宋)に渡り、旅の途中に病に倒れ、助けられた農家で薬としてお茶を飲用し、回復したことから、種を持ち帰って現在の福岡で栽培を始めた。また、「喫茶養生記」を著して、お茶の効用と生産を全国に広めたそうだ。しかし、日本に最初にお茶を伝えたのは、それよりも約400年前の平安時代に遣唐使として渡った最澄で、お茶の種を持ち帰って比叡山麓の坂本に植え、その頃にこの朝宮の地にもお茶の栽培が伝わったという。

 全国のお茶の生産量は静岡県約40%、鹿児島県約30%、三重県約10%、京都府約2%なのに、宇治茶の売上高は約30%を占めるそうだ。「ん?」と思って宇治茶の定義を調べてみたが、「京都府南部産の浅蒸しで製茶したお茶」、

「京都府南部、宇治市及びそれを囲む郡部で産出されるお茶」、「歴史・文化・地理気象等総合的な見地に鑑み、宇治茶として共に当該産地である京都・奈良・滋賀・三重の四府県産で、京都府業者が府内で仕上げ加工したお茶」、「宇治の茶師が吟味し、ブレンドしたお茶」、「京都府で仕上げ加工したもの」、さらに「宇治茶の名の下に販売されているお茶」に至っては何でもええちゅーこと?多分、産地が入っているので商標登録できないのだろう。販売者の都合のいい解釈がまかり通っているようだ。実は、徳島のお茶生産者から地元にはブランド力がないので、ほとんどを宇治や静岡に出荷していると聞いたことがある。皆さん、各自でお考え頂きたい。


片木さんはそれまで、全生産量の99%をお茶問屋に出荷していたが、消費者にもっと朝宮茶のおいしさを知ってもらおうと、産直を始めることにした。
 3種類の害虫には3種類の殺虫剤というように、病害虫の数だけ農薬が必要で、従来型農法の篤農家は年間15〜20回の農薬散布をしていたそうだ。農薬といっても薬ではなく、害虫を殺すのは殺虫剤だ。さらに水溶性の農薬は、効果を持続するために定着剤(ワックス)も散布するが、お茶は収穫して洗浄工程を経ずに蒸しにかける(洗えないし、水で洗ってもワックスは落ちない)ので、お茶を淹れて飲む度に農薬も飲んでいることになる。 
 見かけの良いお茶を作り、生産性を上げ、利益も上げる近代農業を率先して推進して来た片木さんも、大量の農薬や化学肥料を使ってこられたが,農薬散布量、残留量の安全基準は体重50kgの成人男性を基準にしていて、人間が摂取した農薬は体外に排泄されず、骨髄等に蓄積されることを知った。また、直販するようになって初めて、自分の作ったお茶を妊婦さんや幼児にも飲んで頂く可能性があることに気付いた。
 自分の顧客だけにでも安心して安全なお茶を飲んで頂きたいと一念発起し、1975年、片木さんが26歳の時に、おそらく全国で初めての試みだっただろうという完全無農薬のお茶栽培に踏み切った。 

 農薬散布を止めるととたんに大量の害虫が発生した。害虫に食い荒らされて、新芽は出ないどころか、枯れたようになって、畑全体が赤茶けてしまった。1年目の収穫は「ほぼ0」、2年目も「ほんの僅か」。ある程度予想していたとはいえ、周囲の農園からも苦情が相次ぎ、精神的にも経済的にも厳しい状況に追い込まれた。屋根屋の手伝いや日雇いのアルバイトで食いつなぐ生活が続いた。



 ところが、3年目には新芽が出始めたのである。農薬を止めたことで、害虫の天敵であるクモやカマキリ、てんとう虫、ハチなども増えて、自然の生態系が復活し、お茶の木を救ったのである。農薬が自然の循環を止めていたのを改めて実感した。その年は従来の40%の収量があった。まさに天の恵みである。
 4年目からはコンスタントに農薬散布していた頃の7〜80%は収穫できるようになった。これ以上、単位面積当りの生産性を上げようとは思わない。無理をすると、自然のサイクルを壊すことになりかねないと考えている。

 今年で、無農薬栽培を初めて37年目になるが、品評会でも高い評価を得るようになった。全国のお茶生産者にも呼び掛けをし、無農薬栽培を広める活動を続けている。朝宮地域の50軒中20軒が無農薬になった。従来型農法の篤農家も散布量、散布回数も減らすようになった。

肥料にもこだわっている。一般的に良く使われている鶏ふんの値段は油かすの1/5だが、チャドクガが付きやすくなり、デリケートな茶葉には匂いも付くので使わない。菜種の油かすでもノルマルヘキサンという薬剤で抽出する圧抽式ではなく、より高価な薬品を使わない圧搾式の油かすを使っている。

 「私の茶園では散水もしません。散水すると、その中に農薬を混ぜているのではないかと疑う人もいますし、全く自然のままに育てています。それに、収量も品質も変わらないことがわかってきたので、近年は無施肥の畑も増やしています。畝間の土を深耕し、刈り取って来た笹や茅を鋤き込みます。土を踏んでみて下さい。柔らかいでしょ?クローバーには窒素固定菌がありましてね、これを株元に植えて開花後に鋤き込む取組みも始めています。そうするうちに土中菌がバランスよく含まれるようになりましてね、お茶は樹高が高くなると新芽が伸びなくなるので、5年に1度ぐらいの頻度で枝を刈り落とす株の更新をするのですが、それもしなくてよくなりました。雷が土に窒素を供給するのはご存知ですか?空気中の80%は窒素でしょ?雷が放電した際に窒素がイオン化して地中に供給されるのですよ。」

 「へぇー。」の連続である。片木さんの茶園は手入れが行き届いて実に美しい。地面には無数のクロアリがせっせと働き回っている。

 「ハハハハ、これが無農薬の証ですよ。クモの巣も沢山はっているでしょ。10種以上いると思います。種類によって網の目の大きさが異なるので、捕食する害虫の種類も異なります。鳥たちも安全な餌があることを良く知っていましてね、ウチの茶畑の周りの雑木林にはウグイスやメジロ等の野鳥が沢山いますよ。」


 「かたぎ古香園」に戻って、片木さんにお茶を淹れて頂いた。熱めとぬるめのお湯の2つの温度のポットがあり、熱めのお湯を注いで急須から湯のみ茶碗も温める。次にご自慢のお茶の葉をたっぷり急須に入れ、二つのポットのお湯で巧みに温度調整をしながらお湯を注ぎ、しばらく置いて湯のみ茶碗に注がれるとお茶のいい香りが立ち上った。

 「おいしい。」と言う他はない。「もうちょっと入れてよ。」という量なのだが、いいお茶というのはナミナミと注ぐものではないらしい。味と香りの異なる二煎目、三煎目もおいしく頂いた。 

 「朝宮茶は茶葉が薄くて柔らかいので浅蒸しにします。山吹色の澄んだ色のお茶が出て、見た目とは違い、本来の香りとおいしさが引き立ち、三煎、四煎目まで楽しめます。お茶は摘み取ると発酵を始めるので発酵を止めるためにすぐに蒸しにかけるのですが、浅蒸しというのは蒸しの火入れ時間を最小限にとどめて製茶します。それに対して深蒸しというのは、近年になって、苦みの強いお茶の産地で苦みを和らげるために開発された製法で、通常の約3〜10倍蒸しにかけて製茶します。深蒸しをするとコクが増すと思われていますが、火入れ時間が長いため、苦みとともに本来の味や香りは失われ、お茶から粉が生成されて、そのざらつきがコクと勘違いされているのです。深蒸しも好みなので否定はしませんが、本来、浅蒸しで製茶すべきお茶の味や色をごまかしていると思っています。深蒸しはお茶を淹れた時に生成された粉
が湯のみにも出てきて、お茶が濁って深い緑色に見えます。最近ではこれがお茶の色と勘違いされているのですね。ですから、加工助剤と称して、緑の発色を良くするために重炭酸アンモニウムや旨味を増すためにグルタミン酸ナトリウム(=アミノ酸等)が添加されています。お茶を濁すという言葉がありますね。茶道を知らない者が適当にお茶を濁して抹茶に見えるようにしたというのが語源らしいですが、私には、澄んだお茶を濁らせてしまうこと自体が、本来の意味のような気がします。」

 「紅茶も作られているのですね?」

 「ええ、20年程前に蒸さずに直接釜でいる釜煎りというお茶の製法で、『親子番茶』という商品を作っていたら、うっかり発酵させてしまい、紅茶になってしまったのですが、これがなかなかいける。無農薬の紅茶を飲みたいというお客様のニーズもあり、作り始めました。緑茶としては2番茶は1番茶より価値が低く、収穫時期が害虫のウンカが発生する時期にも当たるのですが、ウンカに食べられた芽や葉は独特の香り成分を生成し、製茶するとさらに素晴らしい香りとなります。紅茶の産地として有名なダージリンの紅茶がマスカットのような香気が立つのはこの成分で、朝宮の気候、風土がダージリンに似ていることがわかりました。2番茶の新たな活用方法として、最高の紅茶ができるよう取組みを続けているところです。」


おいしいお茶の淹れ方を尋ねた。

 「煎茶で、旨味を活かしたい時は、旨味成分のテアニンが浸出し易い約60℃のお湯でじっくり時間をかけて淹れます。香りを活かしたい時は、熱めのお湯で直ぐに淹れます。カテキンやカフェインは高い温度でないと浸出し難いですね。そのため、ウチでは60℃と90℃のお湯を用意しています。」

 最後に、お茶の無農薬栽培を成功できた秘訣と、今後の抱負を尋ねた。

 「最近、何でも儲け最優先で、生産性や合理化が推進されて、世の中はどうもおかしな方向に進んでいるように思います。お茶づくりや農業に関しても同じで、現状に対する反省と強い危機感から、先人たちが築き、伝えてきた自然な栽培を復活し、何よりも自分自身が納得できるお茶づくりを絶対に成功させてやるという強い意志と何事を成すにも我慢が肝心だということでしょうか。古くから、お茶は日本人の暮らしに根付き、一家団欒で頂く習慣がありました。日本全国、食卓を囲んで安全でおいしいお茶を飲んで頂き、忘れられつつある大切な本質を家族の和から取り戻して欲しいですね。」

 普段飲んでいるお茶なのに知らないことばかりで、多くのことを学ばせて頂いた。お茶への強い想いと無農薬栽培の先達の片木さんに是非ともコレゾ賞を受賞して頂きたいとお願いしたところ、ご快諾頂いた。


COREZO(コレゾ)「何事にも強い意志と我慢が肝心、完全無農薬のお茶づくりの先達」である。


片木 明(かたぎ あきら)さんに関するお問い合わせは

メールで、info@corezo.org まで

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、返答致しません。


COREZO(コレゾ)賞 事務局 (最終取材2012.06.編集更新2012.11.02.文責 平野龍平)

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